インターネット取引に対する税務調査の動向
ネット取引の税務調査状況とは
国税庁は、令和元事務年度(2020年6月までの1年間)におけるインターネット取引に関する税務調査の状況を公表しています。
国税庁発表によると、インターネット取引を行っている個人事業者などを対象に1,877件(前事務年度2,127件)を実地調査(特別・一般)した結果、1件あたり平均1,264万円(同1,243万円)の申告漏れ所得金額を把握しました。新型コロナの影響で、税務調査の件数自体は減少していると想定されますが、一件あたりの申告漏れ額は上昇しているようです。
この申告漏れ額は、同時期の実地調査(同)全体での1件平均1,190万円を上回り、申告漏れ所得金額の総額237億円(同264億円)に対し65億円(同58億円)を追徴しました。
【インターネット取引の調査状況】
(出典:国税庁公式サイト(報道発表資料)より抜粋)
福岡国税局の状況
福岡国税局においては、下記のとおり、令和元年事務年度で、調査件数120件、申告漏れ所得金額が1,396万円となっています。
(出典:福岡国税局公式サイトから抜粋)
ネット販売サイトの無申告
インターネット取引に関する税務調査の事例です。ライブイベントで販売される音楽メディア等をインターネット販売することにより多額の利益を得ていたものの申告せず、その利益で運営した暗号資産の利益も一部しか申告しなかったAに対して課税したものがあげられています。
Aは、部内資料から、複数のネット販売サイトでの販売が想定されたものの、連年無申告だったことから、調査に着手した結果、A本人の預金口座にネット販売業者からの多額の入金があることを把握しました。
Aは、自らの所得を認識し、申告の必要性も分かっていながらも、ネット取引という匿名性の高い取引であることから、税務当局からの納税を免れるため、申告に必要な領収書などを破棄するとともに、ネット販売サイトで使っていたIDを削除するなどの隠ぺい行為を行った上で、故意に申告しませんでした。
その結果、Aに対しては、所得税6年分の申告漏れ所得金額約4,600万円について追徴税額(重加算税含む)約1,900万円が課税されました。
オンラインショッピング取引の調査
オンラインショッピングやネット広告などインターネット取引はすっかり定着しており、多額の売上・利益を上げながら、匿名性の高いネット取引の売上は国税当局には把握されまいと考え、無申告・過少申告する業者は多いものとみられております。
国税当局では、ネット取引は無店舗による事業形態となるため、その把握は困難ではあるものの、あらゆる有効な資料情報を収集・分析して適正な課税に努めています。
上記の事例とともに、税務調査の特性と傾向を十分に把握して、適切な申告を心がけましょう。
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