Shopifyで越境ECを始める方へ|輸出免税で消費税還付を受けるための会計・税務の注意点
Shopifyの越境ECで消費税還付を受けるには?
Shopifyを利用すれば、日本国内から海外の消費者へ商品を販売できます。
日本から海外へ商品を発送する取引は、一定の要件を満たすことで輸出免税となり、仕入れなどで支払った消費税の還付を受けられることがあります。
ただし、Shopifyで海外から注文を受けただけでは、輸出免税や消費税還付が自動的に認められるわけではありません。
今回は、Shopifyを利用する越境EC事業者が注意したい会計・税務のポイントを、初心者向けに解説します。
輸出免税と消費税還付の基本的な仕組み

日本国内で商品を販売すると、原則として消費税がかかります。
一方、日本から海外へ商品を輸出して販売する取引は、一定の要件を満たすと輸出免税となり、販売時の日本の消費税が免除されます。
その一方で、商品の国内仕入れ、梱包資材、国内倉庫料、広告宣伝費などには消費税が含まれていることがあります。
例えば、国内仕入れなどで支払った消費税が100万円あり、国内販売で預かった消費税が20万円であれば、条件を満たすことで差額の80万円が還付される可能性があります。(国税庁)
ただし、課税売上高が5億円を超える課税期間や、課税売上割合が95%未満の課税期間は、支払った消費税の全額を控除できるとは限りません。個別対応方式または一括比例配分方式による按分計算が必要です。(国税庁)
※ 越境EC事業者が押さえるべき国際税務の基礎も参照ください。
還付を受けるには課税事業者になる必要がある
消費税の還付を受けられるのは、原則として消費税の課税事業者です。
免税事業者の場合、仕入れに多額の消費税を支払っていても還付は受けられません。
なお、すでにインボイス発行事業者として登録している場合は、その時点で課税事業者となっているため、あらためて「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。
この場合に確認すべきなのは、届出の有無ではなく、どの計算方法で申告しているかです。
免税事業者が還付を受けるためには、原則として、還付を受けようとする課税期間が始まる前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。新規開業や法人設立初年度には、提出期限の特例があります。

ただし、課税事業者を選択すると、原則として2年間は免税事業者に戻れません。
さらに、この期間中に調整対象固定資産を取得した場合や、一般課税の課税期間中に高額特定資産を取得した場合などは、一定期間、免税事業者へ戻ることや簡易課税制度を選択することが制限されます。
高額特定資産とは、原則として一つの取引単位につき税抜き1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産です。
倉庫設備、大規模なシステム開発、多額の商品仕入れを予定している場合は、事前の確認が必要です。(国税庁)
また、輸出還付を想定する場合は、実際の仕入税額を使用する一般課税が基本です。
簡易課税制度では、実際に支払った消費税ではなく、売上に一定のみなし仕入率を掛けて納付税額を計算します。
インボイス制度を機に登録した事業者が利用できる「2割特例」も同様であり、適用している間は仕入税額による輸出還付を受けられません。
現行の2割特例は、令和8年9月30日までの日が属する課税期間までの措置です。一般課税へ切り替える時期とあわせて検討しましょう。(国税庁)
Shopifyの注文データだけでは輸出の証明にならない

Shopifyの管理画面には、購入者の住所、注文金額、商品名、通貨、発送状況などが記録されます。
しかし、Shopifyの注文履歴だけでは、商品が実際に日本から海外へ輸出されたことを十分に証明できません。
輸出免税の適用を受けるには、輸出許可通知書、配送会社の発送書類、国際郵便の控えなどを保存する必要があります。
国際郵便の場合は、原則として次の書類を保存します。
- 20万円を超える郵便物:輸出許可書
- 20万円以下のEMS・国際小包:郵便物の受領証と発送伝票などの控え
- 20万円以下の通常郵便物:引受けを証明する書類に品名、数量、価額を追記したもの
これらの輸出証明書類は、原則として7年間保存します。(国税庁)
実務上は、Shopifyの注文番号、インボイス、送り状番号、追跡番号、輸出許可通知書を注文ごとに結び付けて保存する仕組みを作ることが重要です。
あわせて確認したいのが、輸出許可通知書の輸出者名義です。
発送代行業者やフォワーダーの名義で通関している場合、自社の輸出免税を証明するには、輸出申告書等の原本保存や関係事業者との所定の書類のやり取りが必要になることがあります。
他社名義だから直ちに輸出免税を適用できないとは限りませんが、通常より複雑な管理が必要になるため、契約時点で輸出者名義と書類の交付方法を確認しておきましょう。(国税庁)
海外倉庫からの販売は輸出免税ではない
同じ海外向け販売でも、商品がどこから発送されたかによって消費税の取扱いは変わります。
- 国内在庫を海外の購入者へ直接発送する場合:輸出免税
- 自社商品を海外倉庫へ移送し、現地から購入者へ販売する場合:国外取引
自社の商品を海外倉庫へ移した時点では、通常は自社在庫の移動であり、売上ではありません。その後、海外にある商品を現地で販売した取引は、日本の消費税の課税対象外となります。
国外取引は輸出免税売上とは異なり、課税売上割合の計算にも含まれません。
海外のフルフィルメントサービスや海外倉庫を併用している場合は、発送元ごとに売上を区分して管理しましょう。(国税庁)
売上は銀行への入金額ではなく総額で計上する

Shopify Paymentsなどを利用すると、商品代金から決済手数料、返金額などが差し引かれて銀行口座へ入金されます。
例えば、商品代金が10万円、決済手数料が4,000円、銀行入金額が9万6,000円の場合は、次のように処理します。
(借)普通預金 96,000円 / (貸)売上高 100,000円
(借)支払手数料 4,000円
銀行への入金額9万6,000円だけを売上として処理すると、売上高が少なく計上されてしまいます。
Shopifyの注文データ、支払明細、銀行入金額の3つを毎月照合しましょう。
なお、決済手数料の消費税区分は一律ではありません。
決済代行手数料として非課税となる場合、課税仕入れになる場合、支払先が国外事業者となる場合があり、契約内容に応じた判断が必要です。
また、返品、返金、カードの不正利用によるチャージバックが発生した場合は、売上の取消しだけでなく、商品が戻ったか、廃棄したか、決済手数料が返還されたかも確認します。
期末には、未発送の注文を売上に含めていないか、国内外の倉庫にある商品を棚卸資産として計上しているかも確認しましょう。
外貨売上は円換算ルールを統一する
海外向け販売では、米ドルやユーロなどの外貨で売上が発生します。ただし、日本の会計帳簿には、日本円に換算して記録しなければなりません。
原則として、売上を計上する日の為替レートを使用します。継続して同じ方法を使うことを条件として、合理的な換算方法を採用できる場合もあります。
売上計上時の円換算額と、実際の入金時の円換算額との差額は、売上の増減ではなく、原則として為替差損益として処理します。
国内仕入れのインボイスも保存する
輸出証明書類を保存していても、国内仕入れに関する請求書がなければ、仕入税額控除を受けられないことがあります。
商品仕入れ、梱包資材、国内送料、倉庫利用料などについては、原則として帳簿と適格請求書等の両方を保存します。
仕入先がインボイス発行事業者かどうかも確認しましょう。
海外事業者へ支払うShopify利用料、海外広告費、アプリ利用料などは、国内仕入れとは消費税の取扱いが異なります。
これらが「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する場合は、支払った国内事業者が申告・納税を行うリバースチャージ方式の対象となります。
ただし、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間や、簡易課税制度が適用される課税期間は、当分の間、リバースチャージ方式による申告の対象外です。
輸出免税売上は、課税売上割合の計算上、課税売上に含まれます。そのため、越境EC事業者は課税売上割合が95%以上となるケースが多いものの、土地の売却、住宅家賃、受取利息などの非課税売上がある場合は、95%を下回る可能性があります。毎期確認が必要です。(国税庁)
課税期間を短縮して還付を早める方法
輸出免税売上が中心の事業者は、毎期継続して消費税の還付が生じることがあります。
原則どおり年1回の申告では、仕入れ時に支払った消費税が還付されるまで、長期間にわたって資金が手元から出た状態になります。
「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出すれば、課税期間を3か月ごと、または1か月ごとに短縮し、還付申告を早期に行うことができます。
資金繰りの改善につながる一方、申告回数が増えるため、経理や申告の負担も大きくなります。
また、一度適用すると、事業を廃止した場合などを除き、原則として2年間は適用をやめたり、別の短縮期間へ変更したりできません。(国税庁)
還付申告では追加資料を求められることがある
消費税の還付申告を行う場合は、申告書とともに「消費税の還付申告に関する明細書」を提出します。
税務署から、輸出許可通知書、インボイス、仕入請求書、銀行口座の入出金資料、Shopifyの注文データ、取引の流れを説明する資料などの提出を求められることもあります。
証拠書類が不足している場合や、注文、発送、入金の関係を確認できない場合には、還付までに時間がかかる可能性があります。
還付申告の直前に資料を集めるのではなく、毎月の経理の段階から注文、決済、発送、入金を照合しておくことが大切です。
まとめ
Shopifyを利用した越境ECでは、輸出免税によって消費税の還付を受けられる可能性があります。
ただし、還付を受けるためには、次のような準備が必要です。
- 課税事業者になっているか
- 一般課税で申告しているか
- 国内発送と海外倉庫発送を区分しているか
- 輸出証明書類を保存しているか
- Shopifyの売上を総額で計上しているか
- 注文、発送、決済、入金を照合しているか
- 国内仕入れのインボイスを保存しているか
当事務所では、Shopify・Amazon・楽天などの各プラットフォームの売上データと、freee・マネーフォワードクラウドを連携した経理体制の構築にも対応しています。
宮川公認会計士事務所では、越境EC事業者の会計処理、消費税の届出、輸出免税、消費税還付申告をサポートしています。
海外販売を始める方や、現在の経理方法に不安がある方は、早めに専門家へご相談ください。

参考情報
以下、本文に関係する参考情報となります。
国税庁
- No.6551 輸出取引の免税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
輸出免税の対象、輸出証明書類、保存期間、輸出取引に対応する仕入税額控除について説明しています。 - No.6501 納税義務の免除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501_qa.htm
免税事業者が消費税還付を受けるための課税事業者選択について説明しています。 - 課税事業者選択の取りやめと簡易課税制度選択の制限
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/11.htm
課税事業者を選択した場合の2年間の制限や、調整対象固定資産を取得した場合の制限について説明しています。 - No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6502.htm
高額特定資産を取得した場合の課税事業者の継続適用や、簡易課税制度の選択制限について説明しています。 - No.6401 仕入控除税額の計算方法
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6401.htm
課税売上高が5億円を超える場合や、課税売上割合が95%未満の場合の仕入税額控除の計算方法を説明しています。 - 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
2割特例の対象者、適用期間、適用できない課税期間などを説明しています。 - 輸出取引に係る輸出免税の適用者
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/11/01.htm
輸出申告を他の事業者に委託した場合などの、輸出免税の適用者と必要書類について説明しています。 - 消費税のあらまし(令和8年6月)― 第2「どんな取引が課税対象?」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/pdf/004.pdf
資産が国内にある場合と国外にある場合の、国内取引・国外取引の判定について説明しています。 - 外貨建取引の課税標準
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/14/06.htm
外貨建ての売上や仕入れを日本円に換算する際の為替レートについて説明しています。 - 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/shohizei/ippankazei/shiirezeigakukojo/choboseikyushohozon.html
仕入税額控除を受けるために必要となる帳簿や請求書等の保存について説明しています。 - No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6118.htm
国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供や、リバースチャージ方式の基本的な取扱いを説明しています。 - リバースチャージ方式による申告を要する者
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/26/02.htm
課税売上割合が95%以上の場合など、リバースチャージ方式による申告の対象外となるケースを説明しています。 - No.6137 課税期間
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6137.htm
消費税の課税期間を1か月または3か月に短縮する制度と、変更制限について説明しています。 - 消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/shohi/06.htm
消費税の還付申告に関する明細書を含む、申告書や添付書類の様式を掲載しています。 - 消費税還付申告に関する国税当局の対応について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022001-098.pdf
還付申告の内容確認、証拠書類の提出、還付金の支払いが保留される場合などを説明しています。





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